この数年毎年同じ頃に九州の短い旅をさせてもらっている。
熊本の宇土という町の「カフェレストラン・ポケット」に連れて行ってもらったのはやはり熊本で古くから沢山のアーティストを招いて自宅を開放して<自宅といっても1階は完全にライヴができる広間にしている)「紙ひこうき」という名で活動をされている本田さんとそのパートナーのふうさんだ。紙ひこうきを紹介してくれたのは、今、青森の病院で闘病している高坂一潮さんだった。一潮さんはこの熊本の畑の広がる中にポツンとある「紙ひこうき」にシバさんと行ったそうで、そうやって歴史を聞いてみればそれはもう沢山の人達につながっていくのだけれど、熊本には音楽を愛していてしっかりと活動している人たちが凄く多いことをはじめて「紙ひこうき」に行って唄ったときに知った。なんといってもギターの達者な人達がそれぞれに素晴らしい演奏をしているので、私が唄った後の打ち上げでノックアウト状態だった。そういう人たちが私のステージを聴いていてくださったのかと思ったら申し訳ないくらいだった。沢山のアーティストから慕われていたふうさんは着物の生地で素晴らしい服を創作される。そのふうさんの体調が良くないときからしばらく「紙ふうせん」には行けずに、その少し前に本田さんが音響機材を積んで私のツアーを組んでくださり宇土の「ポケット」に連れてきてくださったのだった。
今はふうさんもお元気になっていられるようで、近いのに今回は顔を見に行けなかったのが残念だった。週末を利用しての三日間の旅で、ただ唄うだけで移動していくのが悔しいときがたくさんある。どうしても逢っておきたい人や、行っておきたい場所もある。時間があっても心に余裕がないとこういうふうになる。もちろん移動に時間がかかるから、もう少しゆっくりとしたスケジュールをつくることもこれから絶対に必要だ。こんなに沢山の人たちと出会っているのだから、その場限りでは、これからの時間が薄っぺらくなってしまう。
この次はライヴのためだけでなく熊本の大自然の中をバスに乗って、そして歩いてまたあの畑の真ん中の小さな音楽の館に行きたい。
今回は、カフェレスト・ポケットが初日だ。オーナーの門内夫妻は若々しくて働き者。ご主人は昼間は会社務めをしてその間は奥さんの里美さんが切り盛りをしている。今は息子さんも手伝っていて、界隈のお客さんや、仕事で通りがかったときに必ず寄るお客さんで朝早くから、そしてランチ、夜は少しお酒も飲めるようになっていて憩いの場所という空気が満ちている。
ポケットのライヴには豪華なお弁当やなどの食事のメニューがついている。
お客さんはそれを食べてゆっくりしてからライヴを楽しむ。リハーサルのあいだに予約をしているお客さんの名前が紙に書かれてそれぞれのテーブルに置いてあって、こういう心遣いは招くほうも招かれるほうも両方が気分が良いものだ。お客さんを集めてくださるその努力に応える気持ちが高まっていく。
少し日常とは違う時間を!という心だ!
この日もテーブルについたお客さんがそれぞれにゆっくりと食事をしたりお酒を飲んだりしている間にステージが始まった。細波(さいは)さんという男性がしばらく唄われて、そのあと私もゆっくりと唄った。10月11月は唄う曲順はあまり変えていなかった。いつも聴いてくださる方もあるが、はじめてのお客さんもあるのだから、曲は変えていなくても、話すことは変わる。いわゆるネタというのはないこともないけれど、それより最近の出来事やとても身近なことや今感じていることを話していることが多い。もちろんその土地で思ったことや、思い出話もある。20曲くらい唄うつもりでも、気がつくと15曲くらいで2時間近くになってしまったり、やはりライヴは毎回違うものだ。
宇土には、昔エレックレコードの時代に会っていたMさんがいる。彼女がご主人の故郷に家族で引っ越してきていてメールを送ってきてくれて、35年近くの歳月がたった3年前にこのポケットで再会した。ひとめで当時の面影がみえたときは嬉しかった。
この夜もご主人と一緒に徒歩で随分時間をかけてやってきてくれた。
打ち上げの席で彼女とゆっくりするのは今回が初めてのような気がする。共通の話題は当時のエレックのこと、佐藤公彦さん(ケメ)が唄うことを本格的に再開してお互いに凄く嬉しいことなどを話して夜が更けた。
やっぱり、今度は熊本にもう少しゆっくりしたい。。。翌日は早朝に高速バスで九州の阿蘇を越えて宮崎まで行くのだ。
2010年03月04日
2009年11月の九州
posted by よしだよしこ at 00:00| 日記